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Jeune fille Rozen

Jeune fille Rozen

VOL.2 A cold day

「今日はとても寒い日ねぇ…」
享年30歳。丁度5年前の12月に交通事故で死んだ。
「幽霊は暑さ寒さを感じる訳じゃないけどぉ…」
それでも今日は寒いわぁ。一人、呟いた。
彼女は自縛霊になってマンションの一室に憑いていた。
どこか寂しげな部屋。多分気のせいだろう。
今のこの部屋の住人は仕事に行っている。
「動けないのも…暇ねぇ…」
幽霊だから勿論物にも触れない。
「ちょっと寝ようかしらぁ……」
少しだけ眠ろう、そう思って眠り始めた。

ガタッ。
「ふぁぁ…何かしらぁ?」
眼を覚ますと、目の前に吃驚したような男の子がいた。
慌てて時計を見ると、既に午後8時。
「寝すぎちゃったぁ…」
そう言って男の子の横に行く。
「おかえりなさぁい…」
私が寝る所を見たのが珍しいのかまだ固まっていた。
「私が寝てたのがそんなに珍しいかしらぁ?ふふっ…」
「早くご飯たべちゃいなさぁい…」
男の子は買って来たご飯を食べ始める。
「そんな物ばかり食べてないで…ちゃんと作ってくれる人見付なさぁい…」
そう言うと、男の子は真っ赤になって俯いた。
「あらぁ…その様子だと好きな人がいるのねぇ…。大丈夫よぉ。邪魔しないからぁ…」
一瞬、何かいいたそうに顔を上げたが、すぐにまた顔を下に向けた。
(あらあらぁ、可愛いわねぇ…)
「もう寝ちゃうのぉ?お休みなさぁい…」
夕飯の後、仕事をしてから男の子は寝た。
「退屈ねぇ。お昼に寝ちゃったしぃ…」
その時、むにゃむにゃと喋り声が聞こえた。
「寝言かしらぁ…ふふ…」
なおも寝言は続いた。
「あらぁ?私の…名前?もう、いいことないわよぉ?本当は私と話すのだって生気吸い取っちゃって早く死んじゃうのにぃ…」
「え?早く君に会える、ですって?本当に物好きな子ねぇ…」

それから数時間雪がしんしんと降り続く中、男の子の寝顔を見ていた彼女は呟いた。
「今日は本当に…あったかい日ねぇ」
勿論、幽霊に暑さ寒さは関係ないのだけれど。


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